げそべでてーく

Vtuberげそにんちゃんのブログです。

フランス百合マンガ事情概観(Web版)後編

この記事は前後編のうちの後編です。

前編をお読みいただいてからの方が楽しめる……はずです。

 なお、文中の情報は2019年7月時点のものですので、そこだけご了承ください。

 

 

簡単にではあるがフランス語圏における日本産百合マンガの現状を整理したところで、続けて海外の百合マンガ作品に目を向けたい。海外産百合マンガのスタイルを3つに分類しそれぞれ紹介し、今の海外百合マンガの全体像の一端を掴むことを目指す。

 

 自伝的BD、グラフィック・ノベルの系譜

90年代以降、自らの体験を自伝的に表現したBD、グラフィック・ノベルが高い人気を誇っている。ダビッド・ベー『大発作』(関澄 かおる訳、フレデリック・ボワレ監修、明石書店、2007年)やマルジャン・サトラピペルセポリス(園田 恵子訳、バジリコ、2005年)他、リアド・サトゥフ『未来のアラブ人』(鵜野孝紀訳、花伝社、2019年)など傑作と呼ばれる作品も多く存在する。グラフィック・メモワール(Graphic Memoir)とも呼ばれるそれらの作品は、LGBTQや移民など社会的マイノリティと呼ばれる人々が描いたものも少なくない。ここでは近年話題となった2作品を紹介する。いわゆる「百合マンガ」ではないが、女性同士の性愛を扱ったマンガを語る上でこれらの作品を避けて通ることはできないだろう。

 ・アリソン・ベクダル『ファン・ホーム椎名ゆかり訳、小学館集英社プロダクション、2017年

f:id:gesoninchang:20200522140010j:plain

ゲイの父親とレズビアンの娘。父親の死をきっかけに彼女(作者アリソン・ベクダル本人)の半生を回想するグラフィック・メモワールである本作は、膨大な数の文学作品への言及、引用から「文学的」グラフィック・ノベルと称されることが多い。

自らがゲイであることを家族に告白した後、事故とも事件とも言えぬ状況で亡くなった父親。必ずしもよい関係とは言えなかった父との絆を確認するため、父の蔵書、メモ、手紙、日記、当時の新聞など徹底的に資料に当たり坦々と物語を紡いでいく。どこかすれ違いを重ねていた父と子が深い場所では繋がっていたことを認識し、彼の死を受け入れ、同時に自らのアイデンティティとも向き合っていく、そんなお話。

本作においては、CJ・スズキ氏のレビューが白眉であるため一読を勧めたい*1

 ・ティリー・ウォルデン『スピン』有澤真庭訳、河出書房新社、2018年

f:id:gesoninchang:20200522140013j:plain

『スピン』は1996年生まれの作者がスケートに打ち込んでいた10代の自分を回想し描いた作品だ。同性愛者であることに悩む彼女が自らを受け入れることができるようになるまでを丁寧に描く。いじめや家族関係など普遍的な悩みにも苛まされる10代の少女の等身大の物語はLGBTQ当事者だけでなく多くの若者の共感を得るだろう。

スケートという表現方法から、イラストレーション、マンガという表現方法へと移った新進気鋭のコミック・アーティスト。揺れ動く心情の機微、言葉では表すことのできない感情をイラストレーションを用いて効果的に描き出したグラフィック・メモワールの傑作だ。

 

 同性愛をテーマにしたフィクショナルなBD、グラフィック・ノベル

自伝的な要素を前面に押し出していなくても同性愛をテーマにしたマンガは数多く存在する。90年代以降の自伝的BD・グラフィック・ノベルが性や病、社会などの大きなテーマに対し、極めて私的に、でありながら客観的に、冷静に物語を紡いだのに対し*2、これから紹介する作品はより直接的に読者の感情に訴えかけ、ドライブさせ物語を進めていく。

 ・ Lou Lubie, Manon Desveaux, La fille dans l'écran, Marabout, 2019

f:id:gesoninchang:20200522140022j:plain

「色彩」がひとつBDの得意とする業であることは間違いない。例えばジュリー・マロ『ブルーは熱い色』(関澄かおる訳、DU BOOKS、2014年)では淡いグレーのページにヒロインの青色の髪が印象的に描かれているし、カトリーヌ・ムリス『わたしが「軽さ」を取り戻すまで』(大西愛子訳、花伝社、2019年)ではあのシャルリ・エブド事件の生き残りである作者カトリーヌ・ムリスが事件後に失ってしまった世界の「色」を取り戻すまでの日々が描かれている。

本作La fille dans l'écranもまた色彩が印象的な作品である。

イラストレーターを夢見るコリーヌと、カメラマンのマルレイ。学校恐怖症で祖父母の家で療養中のコリーヌのページはモノクロで、カフェで働きながら一見華やかな生活をしているように見えるマルレイのページはカラーで描かれ、中盤、二人が初めて出会うシーンではお互いの色が混ざり合ったかのような表現で2人の心情が表される。モノクロが多い日本のマンガではなかなか見ることができない色を使ったマンガ表現には感心しきりだ。

また、日本にいては分かりずらいフランス人の恋愛観やリアルな生活が描かれた本作は、フランスの文化、風俗を理解するうえでも一読の価値があるだろう。

 ・ステファン・セジク『サンストーン』上田香子訳、誠文堂新光社、2018年

f:id:gesoninchang:20200522140019j:plain

先ほど紹介したLa fille dans l'écranはリアルな日常生活を描いたものだが、この『サンストーン』はまたそれとは別種のリアリティを伴った作品だ。

表紙を見れば分かるように女性同士のBDSM的な関係にフォーカスした本作は、一見過激にも見える性的な戯れをあくまでも日常の延長として描いている。性描写よりもむしろその中で揺れ動く互いの関係性に重きを置いたプロットは日本の百合マンガ読者にも受け入れられやすいのではないか。

美麗なイラストレーションで描かれる耽美な世界は一枚のタブローとしても非常に完成度が高く、手元に置いておきたくなること請け合いだ。

 

 ウェブ発の百合BD、グラフィック・ノベル・MANGA

百合周辺の言説空間、ファンダムの中心はネット上にあることに疑いはない。そして今ではもう作品を発表する場もネット上に移ってしまった。後述するWeekly comicsや大手ウェブトゥーンサイトDelitoonやWebtoon、Hiveworksの他、個人サイトなど非常に多くの場所で多くの多彩な作品が発表されている。もちろんその中には百合マンガも多くある。一部を紹介する。

 ・Caly, Hana No Breath, Weekly comics, 2016

f:id:gesoninchang:20200522140016j:plain

主人公のアザミは同級生の「yuri」や「yaoi」への情熱が理解できなかった。彼女が好きなのは同級生の男の子、グウェン。容姿端麗成績優秀おまけにスポーツ万能、そんな憧れの彼が実は女の子で……という王道ともいえるプロット。

昔から『おジャ魔女どれみ』や『カードキャプターさくら』など日本のマンガ、アニメに触れてきたという作者*3の描く世界は日本のマンガのそれとほぼ変わらない。

一見使い古されたネタにも見えるが主人公の、自分が強く否定していた「yuri」的な関係に惹かれていくことへの戸惑いと葛藤、そして次第にその感情を受け入れていくまでの様が非常に丁寧に描かれており泣く。

このマンガが掲載されているウェブマンガサイトWeekly comicsは、Calyのように日本のマンガやアニメに影響を受けて描かれたグローバルマンガ専門プラットフォームだ。連載陣にはフランスを中心にイタリアやアルゼンチンなど様々な国の作家が軒を連ねる。「日本人が描いてないマンガはマンガ」じゃない、と言われた時代はすでに終わりを迎えたようだ。
 ・Mira Ong Chua, Vampire Blood Drive, 2019

f:id:gesoninchang:20200522140018p:plain

Mira Ong Chuaはまさにウェブ時代のマンガ家だ。カートゥーンストーリーボードアーティストとして働くかたわら、オリジナルコミックを自らのウェブサイトで販売している。また、クラウドファンディングプラットフォーム「Kickstarter」で7万ドルもの支援を受け、2019年10月に待望の初単行本ROADQUEEN: ETERNAL ROADTRIP TO LOVEがセブンシーズ・エンターテインメントから刊行予定だ。

 Vampire Blood Driveはそんな Mira Ong Chua2作目のオリジナル作品で、学園を舞台にした吸血鬼と人間の少女の百合マンガである。カートゥーンの制作に関わっていることもあり、コマ運びやレイアウトにどこかアニメ的なダイナミズムが感じられる。

次回作ROADQUEEN: ETERNAL ROADTRIP TO LOVEは本作よりもアクション要素が強く、よりMira Ong Chuaの個性が極まった作品と言えるだろう。米アマゾン他で予約を受け付け中。

 ・Katie O’Neill, Tea Dragon Society, Oni Press, 2016

f:id:gesoninchang:20200522141323j:plain

ケイティ―・オニールは今ウェブ上で最も熱いマンガ家の一人と言っても過言ではない。2014年にウェブ上で公開され(現在は公開停止)、2016年にOni Pressから出版されたPrincess Princess Ever AfterはCybils Awards(2014)、Sakura Medal(2018)他多くの賞にノミネートされ話題となった。その後2016年にウェブ上で公開された本作も2018年度アイズナー賞で「最優秀ウェブ・コミック賞」「子供向け最優秀作品賞」のダブル受賞を果たし、こちらも引き続き大きな話題となる。

鍛冶を学ぶかたわら、角がお茶っ葉になるというティードラゴンを育てることになった主人公グレタ。育成の先生のもとで出会った少女ミネットとの関係が作品に彩りを与え、ケイティー・オニールの主線を主張しないイラストレーションがふたりの淡い関係性と調和し癒される。

Oni Pressから単行本も発売されているが、まだ公式サイトで全編無料公開されているので興味を持たれた方はぜひ。

 

 おわりに

以上、7本の作品を紹介したが、海外の百合マンガのぼんやりとした輪郭程度は捉えることができただろうか。

冒頭で述べたように「yuri」は他のマンガのジャンルに比べ認知度が低いもののネットを中心に大きななファンダムが形成されており、日本のそれに影響を受けたグローバル百合マンガも数多く存在する。今回はフランスのマンガ市場、欧米圏の百合マンガの紹介にとどまったが、中国や韓国、台湾などのアジア圏に目を向けるとここでは紹介しきれない数の、そして質の高い百合マンガを見付けることができる。また機会があればそちらについても詳しく調べてみたい。

百合マンガに限らず、よりシームレスに世界中でマンガの交流が進んだ先にどのようなマンガ、マンガ表現が現れるのか。今後生まれてくるであろう新しいマンガの形にいやが応にも期待が膨らむ。

 

*1: CJ・スズキ「失われた家を求めて―アリソン・ベクダル『ファン・ホーム』」comicstreet掲載https://comicstreet.net/article/book-review/fun-home-new-edition/ 2019年8月19日 最終閲覧

*2: 市毛史朗「欧米圏のオルタナティブ・コミックスにおける自伝的作品についての論考」『国際マンガ研究5』国際マンガ研究センター、2015年

*3:https://www.manga-news.com/index.php/actus/2019/06/01/Rencontre-avec-Caly-autour-de-la-serie-Hana-no-Breath 2019年8月17日閲覧

フランス百合マンガ事情概観(Web版)前編

2019年8月開催のCOMITIA129で頒布された『百合映画ガイドブック1.5』(発行:ふぢのやまい)に寄稿した、「フランス百合マンガ事情概観」という小文を微修正して公開します。今回は前編です。許可してくださったふぢのやまいさんに感謝。

f:id:gesoninchang:20200504184626j:plain

表紙はぼくが敬愛するマンガ家、関野葵先生です。

 

 はじめに


日本国内においていわゆる「百合マンガ」がジャンルとして確立し、市民権を得て久しい。しかし、フランスでは必ずしも「百合」は多くの人に知られる言葉ではない。日本のマンガがフランスで翻訳出版され始めてから約50年が経過し*1、今では「MANGA」は日本のマンガや「日本のマンガに影響を受けた海外のマンガ(OEL manga)」*2を指す言葉として一般的に使われるようになった。それに付随して「shonen(少年)」「shojo(少女)」「seinen(青年)」「yaoi(やおい)」といった日本国内のジャンルの名称も海外に普及し、フランスをはじめ多くの国のマンガ情報サイトや通販サイトでそれらの言葉を目にすることができる。では、今回のテーマである「yuri(百合)」はどうだろうか? 日本国内では近年隆盛を極める「百合」というジャンルだが、実はフランスにおいては日本国内ほどの盛り上がりを見せてはいないのが現状だ。しかし、かつてのように人目をはばかりひた隠しにするような嗜好ではなくなっているし*3、2011年から数回、フランス南東部の年、リヨンでYaoi Yuri Conというコンベンションが開催されており、「yaoi」ほどではないにせよ徐々に認知度が上がりつつある。


本稿では、現状が不明瞭な海外、主にフランスにおける百合マンガの受容、また海外の百合マンガについていくつかの作品を並べながら現状を概観できるよう努めたい。

 

後述するように、フランスのマンガ市場はBD、マンガ、コミックスそれぞれの出版数がだいたい5:3.5:1.5の割合を占め、世界的に見ても開かれた稀有な市場であることから、フランス語圏の百合マンガの受容を考えることはある程度のアクチュアリティがあるように思う。


以降、慣例に従い、日本のマンガを「マンガ」、フランス語圏のマンガを「バンド・デシネ(BD)」、英語圏のマンガを「コミック(コミックス)」、OELマンガを「MANGA」、そして、それら全てを包括する言葉としても「マンガ」と表記する。

 

フランス語圏における百合マンガ受容小史 -Taifu comicsとその周辺-


 まず初めに簡単にフランスでのマンガ全般の現状を整理したい。BD批評家ジャーナリスト協会(ACBD, Association des critiques et journalistes de bande dessinée)が公開している統計資料によると、2016年にフランスで翻訳出版されたマンガは1,494点でこれはBD、コミックスを含めたマンガの総発行点数(5,305点)の37.5%にあたる*4。一方日本で出版された海外マンガは2017年9月1日~2018年8月31日の一年間で172点*5。およそ9分の1でしかなく、近年徐々に翻訳が進められているとは言え、フランスの現状と見比べると見劣りすると言わざるを得ない。


そんな大規模なフランス語圏マンガ市場で百合マンガはどのように扱われているのか。

 

と、整理する前に「百合マンガ」とは何を指すのか。この大前提を整理しなければ話を進めることはできない。しかし、紙面の都合上そこを検討するのは難しいので、今回は大まかに作者、もしくは出版社が「百合」を大々的に打ち出し出版されているものに限らせていただきたい。つまり、読者側が自発的に作品内に同性愛的な関係を見出し(誤読し)コミュニティ内でその関係性を楽しむ、といった作品は除外する*6


さて、フランスで日本のマンガが人気を博したのはそれよりも先のアニメブームに拠るところが大きい。1978年の『ゴルドラック(UFOロボ グレンダイザー)』以降フランスでは日本のアニメの人気が高まり、その後も『ドラゴンボール』や『めぞん一刻』などが多くのファンを獲得した。そして、その人気作のひとつである1993年からフランスで放映が始まった『美少女戦士セーラームーン』がその後の「yuri」マンガ出版の土壌を作ったといっても過言ではないだろう。天王はるか海王みちるのふたりの間の同性愛的な関係は日本だけでなくフランス他海外にも大きな衝撃を与えた*7

 

しかし、90年代にマンガの積極的な翻訳が始まってからも「百合マンガ」であることを前面に押し出して紹介された作品は多くはなかった。2002年にうるし原智志『キラリティー』がPika Edition(ピカ社)から、2004年にはやまじえびね『インディゴ・ブルー』他がAsuka(アスカ社)*8から出版されるなど断続的に百合……というかレズビアン的な要素を含むマンガは出版されていたが商業的に成功を果たしたとは言えなかった。


そこで日本の百合マンガに注目し新しく「yuri」レーベルを作り、積極的な翻訳出版に挑んだのがTaifu comicsだ。2004年に設立され、当初は主にBLマンガの翻訳出版を手掛けていたTaifu Comicsだが、2011年に初となる百合マンガ作品、森永みるく『ガールフレンズ』を出版しフランス語圏百合マンガ市場へと打って出る。


断続的にしか紹介されてこなかった女性同士の恋愛を扱ったマンガを初めて大々的に打ち出したTaifu comicsだがこちらも商業的に大きな成功を得たわけではなかった。現に、2015年に一端百合マンガの出版を中止している。しかしその後2016年にサブロウタCitrus』を以て再び業界に参入。同作のアニメ化も手伝い話題となり、その後「加瀬さんシリーズ」の翻訳など今後も百合マンガの出版に意欲的だ。

 Taifu comicsのGuillaume Kappがインタビューでこう述べている。

 

 「『Citrus』は『ガールフレンズ』がそうであったように、百合マンガ読者の外へと波及する力を持っている。だが現状『Citrus』と他の百合マンガの間には大きな開きがある。『Citrus』だけが百合マンガを代表する作品だとは思わないので、『Citrus』のヒットに続くような作品を出版したい。」

https://www.manga-news.com/index.php/editeur/interview/Taifu-comics


大きくはない百合マンガ市場でこれまでに16タイトルを出版しているTaifu comics。日本での市場規模を考えると大きな数ではないかもしれない。しかし、森永みるく『ガールフレンズ』、玄鉄 絢『少女セクト』、サブロウタCitrus』など時代のメルクマールとなるような作品をしっかりと抑えたラインナップが、今後のフランス語圏の百合マンガ市場の活性化に繋がることを期待したい。

 

f:id:gesoninchang:20200504185607p:plain

 (2019年7月時点)

*1: 1969年に柔道雑誌Budo Magazine Europeに掲載された平田弘史『武士道無残伝』が最初だと言われている。

*2: Original English Language manga:  NHKでアニメが放送され話題となったトニー・ヴァレント『ラディアン』など。グローバルマンガ(Global-Manga)と呼ばれることもある。

*3: 倉田嘘『百合男子』に見られるような、趣味を隠匿すべしという強迫観念はもはや見られない

*4:https://www.acbd.fr/2825/rapports/2016-lannee-de-la-stabilisation/  2019年8月17日閲覧

*5:ガイマン賞 http://www.gaiman.jp/ 2019年8月17日閲覧

*6: よって、百合的消費をされがちないわゆる「きらら系」作品も対象外とさせていただく。例えば『ご注文はうさぎですか?』における「ココチノ」「千夜シャロ」など。

*7: ポジティブな衝撃だけではない。池田理代子おにいさまへ…』はその同性愛的描写から抗議がありアニメの放送が中止された。詳細は以下の連載。豊永真美「マンガはなぜ赦されたのか –フランスにおける日本のマンガ-」アニメ!アニメ!ビズ 掲載http://www.animeanime.biz/archives/20948 2019年8月19日 最終閲覧

*8:2006年にEditions Soleil(ソレイユ社)に買収され、さらにその後Kazé(カゼ社)に売却。同社のBLマンガレーベルとなる。

(面白さが)約束された勝利のマンガ今から読んどかない?

新型コロナウイルスによって主催したイベントが無期限延期になったげそにんちゃんです。

ここ最近は出版社の厚意で無料公開してもらっているマンガを読む日々です。本当にありがたいことです。ちなみに横山三国志は三巻で挫折しました。

日本だけでなく世界中で猛威を振るう新型コロナウイルス……やっぱり今後COVID-19って呼びます。その方がかっこいいので。

 

COVID-19によって主催したイベントが無期限延期になったげそにんちゃんです。

日本だけでなく世界中で猛威を振るうCOVID-19。日本では外出自粛の呼びかけ程度で住んでいますが、欧米では罰則付きの厳しい外出制限が敷かれていることも少なくない、というのは前回お話しした通りです。

そんな中で「#Coronamaison」という市民ベースのクリエイティブな運動が広がりを見せているわけですが、今回は企業側のCOVID-19に起因する外出規制に伴う民間への支援策についてのお話です。

 

と言っても本当に数多くのサービスが提供されており、全てを紹介することはできない(し把握もしてない)ので、今回はぼくが気になった一点だけ紹介したいと思います。他の施策についてはTwitterで発信する…かもしれません。念のためフォローしていただけると喜びます。

twitter.com

 

ということで今回紹介するのはベルギーの大手BD出版社「デュピュイ社(Éditions Dupuis)」が運営するウェブトゥーンサイト「Webtoon Factory」についてです。

www.webtoonfactory.com

 

この「Webtoon Factory」、本来は月3.99ユーロ(約470円)の月額課金制なんですが、なんと今新規登録すると初月無料…! COVID-19のせいで自宅から出ることができない1ヶ月ここで乗り切ろうぜってことですね。絶対1ヶ月じゃどうしようもないと思いますがそこは置いておきましょう。

「Webtoon Factory」は若手からベテランまで多様な作り手が集まっており、その出自も様々。アニメ業界から参入した人もいるみたいです。BDだと珍しくないですけどね。ホームページから投稿も受け付けているようなので興味のある人は送ってみてはいかがでしょう。

 

いくつかおすすめをば。

≪Les soeurs Grémillet≫

作:Giovanni Di Gregorio

画:Alessandro Barbucci

f:id:gesoninchang:20200406094116p:plain

Les soeurs Grémillet, Alessandro Barbucci, Giovanni Di Gregorio, Éditions Dupuis, 2019

www.webtoonfactory.com

少し前にぼくがTwitterで取り上げた≪Les soeurs Grémillet≫、「Webtoon Factory」に掲載されていたなんて知りませんでした。お恥ずかしい…。この表紙に惹かれた人は読んでください。説明不要。あ、作画のバルブッチはバルバラ・カネパと一緒に『スカイ・ドール』を描いてた人です。

 

≪Yézidie!≫

作:Aurélien Ducoudray

画:Mini Ludvin

f:id:gesoninchang:20200406095738p:plain

Yézidie !, Aurélien Ducoudray, Mini Ludvin, Éditions Dupuis, 2020

www.webtoonfactory.com

正直に言います。今回この記事を描いてるのはこのマンガを紹介するためです。

ご存知の方もいるでしょうか。実はぼくかつて『金正日の誕生日』というBDの紹介動画を作ったことがあります。その『金正日の誕生日』の原作を務めたオーレリアン・ドゥクードレの新作です。作画は長年アニメーター、イラストレーターとして活動していたミニ・ルヴァン*1

www.youtube.com

タイトルの「Yézidie」はイラン北部のクルド人などの一部で信仰されている民族宗教「ヤズィーディー教」の信徒を意味するようです。本作のテーマは「スマートフォンテロリズム」。イスラム国によるテロ行為の中でもヤズィーディー教徒を襲った悲劇とスマートフォンによる現代的な抵抗と戦いを中心に描いた作品……なんですが、まだ2話までしか公開されておらず話はあまり進んでいません。

3話までは登録していなくても読むことができるので、今のうちに読んでみてください。今後面白くなることが約束された作品です。

 

いくつか紹介と言いながら2作しか紹介してません、すみません…。また面白い作品があればTwitterかブログに書きます。

徐々に日本でも市民権を得てきたウェブトゥーンですが、海外(特に中韓)ではすでに当たり前のフォーマットとなりました。名作も多くあるので翻訳増えてほしいなって思います、素朴に。

 

作業用BGM: KOTONOHOUSE「Jump! Swing!! Dance!!!」

open.spotify.com

 

*1:読み方はルヴァンでいいと思うんですが、インタビュー動画ではルヴィーヌって呼ばれてました。どっちが正しいんでしょうか?

フランス版アマビエ?「#Coronamaison(コロナメゾン)」ってなに?

 新型コロナウイルスによってフランス留学が延期になったげそにんちゃんです。

すでに流行がひと段落した感はありますが、いまだに「アマビエ」、Twitterで見かけない日はありません(ぼくがTwitterに入り浸っているからというのもありますが)。なんと実はフランスでもイラストを投稿して難境を乗り越えよう、外出制限すらをも楽しもうという運動がTwitterやインスタグラム、Facebookなどで流行しています。それが今日ご紹介する「#Coronamaison」です。 

ゲームデザイナーのOscar Bardaのアイデアをもとに、イラストレーターのTimがテンプレートを作成、『キュロテ 世界の偉大な15人の女性たち』『エロイーズ  本当のワタシを探して 』などの作品で日本でも知られるペネロープ・バジューが運動への参加を呼び掛けたことで爆発的に「感染」が拡大し、約一週間で1000件を超えるイラストが投稿されました。プロアマ、年齢問わずハッシュタグを付けるだけで参加可能で、プロのバンド・デシネ作家やイラストレーターから外出制限中で暇を持て余した子どもまで、様々なアーティストが自らの「#Coronamaison」を表現しています。その表現手法から「#Coronamaison」をシュルレアリスムにおける「優美な屍骸(le cadavre exquis)」に見立てて評するメディアも登場しました。

www.amazon.co.jp

www.amazon.co.jp

発端となったペネロープ・バジューのツイートがこちら。

「#Coronamaison」のmaisonは「家」を意味するフランス語で、外出制限中で家から出ることができないなら、自分の理想的な「家(部屋)」を想像してみよう、描いてみようという非常にポジティブな運動です。

 Timによるテンプレートは緑色の均一な線で描かれた階段があるだけの部屋で、それぞれのアーティストはそれに着色したり、何かを描き足したり、なんならレイアウトだけ参照して一から自分で描いたりと、小さな一室からイマジネーションを膨らませ、各々が理想的な部屋を描きます。

現在、フランスは日本よりも厳しく外出が制限されており、外出の際には外出証明書が必要だったり、運動などが目的で外出する場合は最大で1時間、自宅から1km圏内に限られ、それらに違反を繰り返した場合1500ユーロもの罰金が科せられるなど、超厳戒態勢が敷かれています。

あまり良い印象のなかった昨今のインターネットですが、外出すらままならない日々で鬱屈としがちな気分をみんなの想像力を以て乗り越えようという、とても前向きなコミュニケーションのあり方に少し感動しました。

最期にいくつ個人的に好きな「#Coronamaison」を紹介して終わります。

他にも素晴らしいイラストがたくさんありますので、ぜひぜひ「#Coronamaison」で検索してみてください~。

 

【参照サイト】 

«Pendant le confinement, la bande dessinée se bouge pour que personne ne bulle»

https://www.ouest-france.fr/sante/virus/coronavirus/pendant-le-confinement-la-bande-dessinee-se-bouge-pour-que-personne-ne-bulle-6784397

www.nouvelobs.com

 

作業用BGM:koducer「Ascending Sceneries」

open.spotify.com

 

フランスBDメディアが選ぶ2019年ベストマンガ(BoDoï編)

 

読み方は「ボドイ」で合ってるんでしょうか?不安です。

「ボドイ」はBDの評論やイベントレポート、作家へのインタビューなどBDとその周辺について網羅的に扱ってたBD情報誌です。1997年に創刊され、なんやかんや (詳細はwikipedia見てください)*1あって、2008年に140号を以て休刊(廃刊?)。その後インターネット上で同名のウェブメディアを運営し始め、今に至ります。

「ボドイ」にはBDに関する記事だけでなく日本のマンガに関する記事も多く掲載されており、それなりに質も高く、フランス語圏におけるマンガ受容を考える上で非常に有益です。

 

 ということで今回はそんなフランス本国のBDメディア「ボドイ」が選ぶ2019年ベスト日本マンガにどのようなものがあるのか見ていきましょう。

www.bodoi.info

 

ちなみに選者は「ボドイ」でマンガに関する記事を多く執筆されているRémi I.さんとFrederico Anzaloneさんです。それぞれランキングを発表されていますので、順に見ていきたいと思います。

 

まずはRémi I.さんが選ぶ2019年ベストマンガがこちら。

2019年にフランスで第一巻が出版されたマンガのランキング

Les top 10 de Rémi I.

MEILLEURS NOUVEAUTÉS MANGA DE L’ANNÉE

1. Les Liens du sang – par Shūzō Oshimi (Ki-oon)
2. La Vis – par Yoshiharu Tsuge (Cornélius)
3. Chiisako Garden – par Yuki Kodama (Vega)
4. Le Bateau de Thésée – par Toshiya Higashimoto (Vega)
5. BL Métamorphose – par Kaori Tsurutani (Ki-oon)
6. Natsuko no Sake – par Akira Oze (Vega)
7. Beastars – par Paru Itagaki (Ki-oon)
8. Tokyo Revengers – par Ken Wakui (Glénat)
9. Errance – par Inio Asano (Kana)
10. Elin – La charmeuse de bêtes – par Itoe Takemoto d’après Nahoko Ueashi (Pika)

f:id:gesoninchang:20200218235554p:plain

http://www.bodoi.info/best-of-2019-les-meilleurs-mangas-de-lannee/

                  ↓日本語

1.押見修造『血の轍』小学館、2017年

2.つげ義春«La Vis(『ねじ式』)»コルネリウス、2019年(『ねじ式』をはじめとしたつげ義春の作品集だそうです)

3.小玉ユキ『ちいさこの庭』小学館、2018年

4.東元俊哉『テセウスの船』講談社、2017年

5.鶴谷香央理『メタモルフォーゼの縁側』KADOKAWA、2018年

6.尾瀬あきら夏子の酒講談社、2004年

7.板垣巴留BEASTARS秋田書店、2017年

8.和久井健『東京卍リベンジャーズ』講談社、2017年

9.浅野いにお『零落』小学館、2017年

10. 武本糸会、上橋菜穂子獣の奏者講談社、2009年

 

2019年にフランスで2巻以降が出版されたマンガのランキング

MEILLEURES SUITES MANGA DE L’ANNÉE

1. L’Atelier des sorciers – par Kamome Shirahama (Pika)
2. Bride Stories – par Kaoru Mori (Ki-oon)
3. Yotsuba & ! – par Kiyohiko Azuma (Kurokawa)
4. Space Brothers – par Chūya Koyama (Pika)
5. Ajin – par Gamon Sakurai (Glénat)
6. Je suis Shingo – par Kazuo Umezu (Le Lézard noir)
7. Perfect World – par Rie Aruga (Akata)
8. Peleliu – Guernica of paradise – par Kazuyoshi Takeda (Vega)
9. Kingdom – par Yasuhisa Hara (Meian)
10. Spiritual Princess – par Nao Iwamoto (Kazé)

f:id:gesoninchang:20200218235559p:plain

http://www.bodoi.info/best-of-2019-les-meilleurs-mangas-de-lannee/

                   ↓日本語

1.白浜鴎『とんがり帽子のアトリエ』5巻、講談社、2019年

2.森薫乙嫁語り』11巻、KADOKAWA、2018年

3.あずまきよひこよつばと!』14巻、KADOKAWA、2018年

4.小山宙哉宇宙兄弟』28巻、講談社、2016年

5.桜井画門亜人』13巻、講談社、2018年

6.楳図かずおわたしは真悟』6巻(仏版)、小学館

7.有賀リエパーフェクトワールド』9巻、講談社、2019年

8.武田一義平塚柾緒『ペリリュー』6巻、白泉社、2019年

9.原泰久『キングダム』27巻、集英社、2012年

10.岩本ナオ町でうわさの天狗の子』12巻、小学館、2014年

 

続いてFrederico Anzaloneさん選出のベストマンガがこちら~。

Le top 10 de Frederico Anzalone

1. La Vie devant toi – par Hideki Arai (Akata)
2. Les Liens du sang – par Shūzō Oshimi (Ki-oon)
3. Himizu – par Minoru Furuya (Akata)
4. La Vis – par Yoshiharu Tsuge (Cornélius)
5. Avec toi – par Keiko Nishi (Akata)
6. Gigant – par Hiroya Oku (Ki-oon)
7. Eisbahn – Sentier verglacé – par Tsuchika Nishimura (Le lézard noir)
8. Hi Score Girl – par Rensuke Oshikiri (Mana Books)
9. Jagaaan – par Kensuke Nishida et Muneyuki Kaneshiro (Kazé manga)
10. BL Métamorphose – par Kaori Tsurutani (Ki-oon)

f:id:gesoninchang:20200218235607p:plain

http://www.bodoi.info/best-of-2019-les-meilleurs-mangas-de-lannee/

                    ↓日本語

1.新井英樹山田太一空也上人がいた』小学館、2014年

2.押見修造『血の轍』小学館、2017年

3.古谷実ヒミズ講談社、2001年

4.つげ義春«La Vis(『ねじ式』)»コルネリウス、2019年

5.西炯子『シロがいて』小学館、2018年

6.奥浩哉『ギガント』小学館、2018年

7.西村ツチカ『西村ツチカ短編集 アイスバーン小学館、2017年

8.押切蓮介ハイスコアガールスクウェア・エニックス、2012年 

9.にしだけんすけ、金城宗幸ジャガーン』小学館、2017年

10.鶴谷香央理『メタモルフォーゼの縁側』KADOKAWA、2018年

 

最後にRémi I.さんとFrederico Anzaloneさんのお二人で選ばれた、2019年に新版として出版されたマンガのベストです。

MEILLEURES RÉÉDITIONS MANGA DE L’ANNÉE (AVEC FREDERICO ANZALONE)

– MW – par Osamu Tezuka (Delcourt/Tonkam)
– Ping-Pong – par Taiyō Matsumoto (Delcourt/Tonkam)
– Solanin – par Inio Asano (Kana)
– Vampyre – par Suehiro Maruo (Le Lézard noir)
– Kirihito – par Osamu Tezuka (Delcourt/Tonkam)

f:id:gesoninchang:20200218235603p:plain

http://www.bodoi.info/best-of-2019-les-meilleurs-mangas-de-lannee/

手塚治虫『MW』小学館、1976年

松本大洋『ピンポン』小学館、1996年

浅野いにおソラニン小学館、2005年

丸尾末広『笑う吸血鬼』秋田書店、2000年

手塚治虫きりひと讃歌小学館、1970年

 

意外なマンガがランクインしていたり、そもそも「まさかこのマンガが翻訳されているなんてっ」ってこともあるかもしれません。個人的には『BEASTARS』がもうちょと上かなと予想していたんですが(フランス人は擬人化がすきなので(偏見))、概ね納得感のある選出ではないでしょうか。

新版のベストマンガだけでひと項目作られているのは、復刻・復刊が盛んなフランスならではと言えるでしょう。

 

ちなみに両氏が挙げているつげ義春の≪La Vis≫は1968年から1972年までの間の7作品を収録したコンピレーションだそうで、こちらはフランスオリジナルです。

 

今後もBDやフランスでのマンガ情報などを積極的に発信していく予定なので、また覗きに来てくださいね~。

twitterをフォローしていただけると更新情報をいち早くお届けできるのでぜひフォローもよろしくお願いします。

twitter.com

 

作業用BGM:メロキュア「メロディック・スーパー・ハード・キュア」

open.spotify.com

 

長屋を改装して海外マンガカフェに!?大阪・谷町六丁目「書肆喫茶mori」に行ってみた。

 

「バンド・デシネってどこで読めるの?」

 

ぼくがBDファンであること告げると8割の方からこう聞かれます(残りの2割は「はぁ…」)。

BDを読むことができる場所……明治大学米沢嘉博記念図書館国会図書館など所蔵している図書館もありますが登録が必要だしどこか堅苦しい…。大型書店であればアメコミ棚の隣なんかにちょこんと置いてあることもありますが、シュリンクがしてあることが多いし、裸で置かれていてもその重量故気軽に立ち読みができるものでもありません。

 

BDを買うことができる場所は今の時代少なくないでしょう。都内であれば渋谷TSUTAYAや新宿紀伊国屋、池袋丸善ジュンク堂などの大型店舗であれば取り扱っているお店もありますし、何より今はamazonなどネット書店で買うことも可能です。

 

しかし日本のマンガとBDの大きな違いがここで問題になります。

 

それが「値段」です。

 

日本の少年マンガが約500円、青年マンガが約800円程度なのに比べてBD他海外マンガは、(ここ最近値段が抑えめとは言え)一冊2000円を超えることも少なくありません。

 

常日頃からBDに触れている層ならまだしも、なんとなく「BDってものがあるらしい、ちょっと読んでみたいなー」くらいの潜在的な読者層が2000円の本をぱっと手に取るのは難しいでしょう。

 

今、BD・海外マンガ界に求められているのはBDを「買える場所」ではなく「読める場所」なのです………多分。

 

ということで本題です。

先日、大阪は谷町六丁目にある海外コミックブックカフェ「書肆喫茶mori」さんにお邪魔してきました。

 

f:id:gesoninchang:20200207225353j:plain

 

2019年7月にオープンした「書肆喫茶mori」は日本に数少ない海外マンガ専門のブックカフェです。明治時代に作られたという長屋を改装して作られた店内はモダンな雰囲気もありながら、当時の柱や梁がそのまま残されている部分も多く、木のぬくもりを感じます。

 

店内では海外マンガを読みながら店主お手製のロシア料理やケーキを楽しむことができ、そちら目当てに来店されるお客さんも多いのだとか。

メニューはこちら。

f:id:gesoninchang:20200207225410j:plain

f:id:gesoninchang:20200207225450j:plain

f:id:gesoninchang:20200207225424j:plain

f:id:gesoninchang:20200207225440j:plain

 

これ以外にも休日にはお知り合いのパティシエが作られたケーキが提供されることがあるんだとか。

ちなみにぼくは、黄桃とオレンジのタルトをいただきました。め~~~ちゃおいしい!!!

 

…食事も非常に魅力的ですが今回のメインはやはり海外マンガ。

「書肆喫茶mori」の名物とも言える壁一面の海外マンガ棚の写真がこちら。

 

f:id:gesoninchang:20200207225240j:plain

f:id:gesoninchang:20200207225258j:plain

f:id:gesoninchang:20200207225336j:plain

 

ひえ~~~~!!!

 

2階までぶち抜きの壁を埋め尽くす一面の海外マンガ…!

壮観ですね……。

 

海外マンガの魅力のひとつとして真っ先に挙げられるものとして、やはりグラフィック面、絵画的な魅力が挙げられるでしょう。その魅力をしっかりと伝えるために表紙が見えるように本を並べているそうです。

 

ちなみに「書肆喫茶mori」さん、2階があります。

 

f:id:gesoninchang:20200207225242j:plain

 

日が暮れかけだったので少し暗いですが、お昼時は日光が入り込んで気持ちよさそう。

こちらの和室は海外マンガや文学の読書会など、コミュニティスペースとしても使われているそうです。

 

海外マンガを買える場所は数あれど、これだけの海外マンガを読める場所はなかなかありません。

「気になる本があるならつべこべ言わずに買え!」と言うことは簡単ですが、まずは海外マンガの裾野を広げるところからだと思うのです。

 

ということで関西に在住の方、関西を訪れる予定がある方は「書肆喫茶mori」に立ち寄られることを強くお勧めします。 

 

書肆喫茶mori

大阪府大阪市中央区谷町6丁目14−2

06-7501-6763 

twitter.com

bookcafe-mori.shopinfo.jp

 

作業用BGM:富士葵「有機的パレットシドローム

open.spotify.com

 

「北朝鮮マンガ展」レポぽよ。

どもどもおはげそー。


先日、赤坂の「彩ギャラリー」さんで開催されている「北朝鮮マンガ展」に行ってきたので簡易レポです。

 

みなさんご存知の通りぼくは以前『金正日の誕生日』というバンド・デシネのレビュー動画を作っており、それからというものぼくの北朝鮮への興味関心憧憬はとどまるところを知りません。

www.youtube.com

↑面白いので見てください。


もちろん北朝鮮のマンガについても例外ではないのですが、いかんせんネット上にほぼ情報がなく、実物を手に入れようと思ってもebayでもそこそこのお値段するのでなかなか手が出せませんでした。(あとハングルが読めない)
もう北朝鮮渡航して仕入れるしかないか……と、ある種の決意が固まりつつあった時、今回の展示の開催を知りました。

 

以下概要です。

北朝鮮マンガ展」
日時:2019年9月7日(土)~9月11日(水)
   12:00~19:00(最終日17:00まで)
場所:アートトラスト「彩ギャラリー」
   東京都港区赤坂5-1-35MMビル1F
「第6回EYEMASK&まぐま展」 会場にて開催
入場無料

f:id:gesoninchang:20190910161922p:plain

 
展示されているマンガやポスターなどは大江・留・丈二さん個人所有の資料だそうです。

twitter.com

大江さんは『マンガ論争』や『まぐま』誌などに度々海外のマンガに関する文章を寄稿されており、その幅広い見識には毎度驚かされます。

f:id:gesoninchang:20190910154551j:plain

f:id:gesoninchang:20190910154546j:plain

 

「マンガ」展と銘打っていますが展示されているのはマンガに限らず、北朝鮮製アニメのパッケージや抗日ポスター、紙幣、硬貨などどうやって持ち出したのか心配になるようなものまで…。

f:id:gesoninchang:20190910154602j:plain

f:id:gesoninchang:20190910154630j:plain

 

興味深いのは多くのマンガにきちんとISBNが与えられていたことです。

f:id:gesoninchang:20190910154619j:plain

f:id:gesoninchang:20190910154623j:plain
まあ動画でも言ったように日本にいると分かりづらいですが、北朝鮮と国交を結んでいる国は実は少なくありませんので、ISBNを持っていてもおかしくはないかなって感じです。

フライヤーによると北朝鮮のマンガは「共産主義主体思想プロパガンダ」「抗日戦記マンガ」「反米帝・反南朝鮮スパイもの」「童話マンガ」「教育マンガ」が9割を占めるそうです。残りの1割がどんなマンガなのか気になります……。 

 

イラストレーションは必ずしも洗練されているとは言えませんが、 貸本時代の日本マンガ…もう少し遡って絵物語の表紙を思い起こさせるものが多くありなんとなく懐かしさも感じます。(ぼくは生まれていませんが)

 

また、写真を撮り忘れてしまったんですが、北朝鮮製アニメには往年の東映アニメを感じさせるものが多く、北朝鮮のアニメ文化がどのような変遷を経てきたのか少し気になります。

 

 

概要にも書きましたが、本展示は「第6回EYEMASK&まぐま展」内での開催となっており、会場内では両誌のバックナンバーの購入も(在庫があるものは)可能です。

f:id:gesoninchang:20190910154605j:plain

 

『まぐま』発行人でマンガ・アニメ研究者の小山昌宏さんの著作も置かれています。

f:id:gesoninchang:20190910154610j:plain

 

 『EYEMASK』はカートゥーン(一コマ漫画)をメインに扱った雑誌で年2回刊行されています。

寡聞にして存じ上げなかったんですが小野耕世さんなどが寄稿されており今後読み進めていく必要がありそうだなー(また積読が増えちゃうなー)とぼんやり考えています。

 

明日には会期が終了してしまいますので、この記事を読んで興味を持たれた方はぜひぜひ足を運んでみてください~。

 

 それでは次は動画でお会いしましょ~。

 

 

作業BGM:The Bombpops 「Fear Of Missing Out」

open.spotify.com

 

twitter.com

 

www002.upp.so-net.ne.jp